シュテルン-ゲルラッハの実験と相補性の考察

シュテルン=ゲルラッハの実験の概要についてはリンクを見ていただくとして省略します。

この実験の特筆点は

  • 垂直なx軸のスピンで不均一磁場に進入した場合50%の確率、他角度に対応して分かれる。
  • 古典的予測される連続的な分布に反し、銀粒子はスクリーン上に2つの分布となって観測される。

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前者について量子状態の確率的性質としてそのまま受け入れる。

後者の条件は

  1. 電子スピンは不均一磁場に対して2値状態のみ取り得る。
  2. 不均一磁場装置の角度は発射段階の銀粒子スピンに対して連続的な状態を取り得る。

この条件を両立するのは一見不可能なように思える。

なぜなら実験結果は電子スピンは2値しか取り得ず中途半端状態はないと示唆しているが、一方は発射段階の銀粒子スピンから特定値へ遷移するためには連続的な過程が必須であると考えられるためだ。

しかし、よく注意すると1と2の条件を両立する方法がないこともない。それは銀粒子が不均一磁場と相互作用する一粒子系(*完全量子系)間の事象において連続的な変換が生じると考えれば、とりあえず条件に反しない。

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記事によっては「世界の本質はとびとびでありコンピュータのようなビット次元なんだ。」という表現で量子論を紹介しているものを見かけると連続値はないような印象を受ける。しかし対立概念でない粒子と波の二重性の関係性は連続値が離散値をつくるイメージとなるためビット次元が本質という訳ではない。

例えばある連続値をaとおき、もう一つ同じ波があれば2aと表現できる。この2という数字は整数で離散値である。実際、繰り込みという操作はこれと類似した概念である。

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単に連続的な変換が許容されてしまうと量子論でなくなってしまうので系全体として離散的である制限はあると考える。例として式で表すとa、bが整数であるときα、βは整数でない値を取り得るがαβは整数でなけれならないという事である。

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ここからボーアの提唱した相補性を適用する。相補性は相反するような事象が互いに補い合うことで系の事象を記述するという意味である。ではこの系が何を示すのかと哲学すれば不変性とそれを実現させる変数であると考える。

不確定性原理では位置と運動量の関係にある不変性であるが、量子では離散的である事が不変性である。

相互作用をするとき何かが不変であるためには変数が存在しなければならない。

よって相補性をイメージするならばこんな感じでないだろうか。直径を斜辺とする三角形の円周角は常に直角である。辺α、βが補い合って直角を作っている。

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相補性のイメージ

結論として磁気モーメントに連続的な変換が生じる一粒子系間の事象においては、何らかの相補的要因によりスピンの向きが不均一磁場に対して特定値をとるのと変わらない仕組みが存在すると考える。下図右では磁気モーメントを補う何かがあるイメージを描いたものである。(※あくまでも量子より高次元事象のイメージである。)

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